楽しい時間はあっという間なので、なるべく早く来てください。
そう前日に、母から連絡が入っていた。最低でも3ヶ月に1回は帰っているのに、毎回想定以上滞在してしまう。今回の想定は、朝のうちに着いて夕方に帰るというものなのだけど…。
今回はじーじばーば宅にも顔を出すので、いつもより想定を上回るのではと懸念。
行きの電車では“超相対性理論”というPodcastをお供に。
同じ回を3回くらい集中して聞かなければ私には理解ができないのだけど、あの方達のお話はとっても楽しい。私の知らないことばかりでとても勉強になるし、3人ともが互いに尊重し合っている様子で、関係性もとても素敵だ。ながら聞きでは内容に追いつけないので、しっかりと集中して耳と頭を働かせて、勉強させてもらっている。
実家に着いて、持って帰るべきものを整理したりなんでもない話をしていると、見たことのないワンピースが出てきた。聞くと、母が私を妊娠中に友人の披露宴などに着て行ったものらしかった。
来月の従兄弟の結婚式、私はちょうどいいドレスを持っておらず。ちょうどいいやと思って着てみると、少し肩幅が大きいのと、肩パッドが入って時代を感じるものではあったが、おおよそぴったり。丈が丁度良く落ち着いて可愛らしく見えた（自己評価）ので、母にそのドレスを借りることにした。
私が腹の中にいる時に母が着ていたもの、27年経って私が着ることになるとは。母子で感慨深いねぇと笑い合った。お互いに歳を重ねて、良い距離感があることで、母と私は仲良くできるようになったな、と思う。昔は怖くて嫌だったのに。
物がきっかけに想いを馳せられる。そういう物を増やしていきたいな、と思う。
じーじばーば宅へ。
じーじはまだ仕事をしている。土曜日なのに。83歳なのに。仕事ができなくなったら一気にボケちゃうんだろうねぇ、とみんなで話す。
いまだに牛丼大盛りを完食するので、本当に元気だなぁと思う。私が遊びにいく時は、果物やらお菓子やらを沢山買ってくれている。それで、買いすぎです！と、いつもばーばに怒られている。
その話を、遊びにいくたびに聞くことができる。
ばーばは最近やっと素直に年齢を教えてくれるようになった。以前は聞いても濁されていたのに。もうすぐ78歳になるらしい。昼食においなりさんをつくって、しゃぶしゃぶの用意をして待っていてくれた。「しゃぶしゃぶはワタシ楽でいいわねぇ」って。
おいなりさんはご飯に黒胡麻が混ざっている、たまにおあげが裏返しになったおいなりさんがあった。どうして裏返しにしたの？と聞いたら、おもしろいから時々やってみたとのことだった。ばーばは面白い。愉しい人。ほうれん草の胡麻和えには紫蘇が混ざっていて、爽やかで香りがよくとても美味しかった。ワタシはばーばがとても好きだ。
昼食を食べ終わると、メロンが一切れだけ出てきた。
私の母はメロンが嫌いで、私はメロンが好き。誰か仲良しから祖母宛にメロンが送られてきたようで、納戸にある2玉はまだ若く食べられないけど、少し前に切ったメロンが美味しかった。私が来るからと一切れだけ食べずに残しておいたらしい。その後も、食べないでおいたさくらんぼ、食べないでおいた国産の枝豆、『好きだと思ったから食べ切らずに残しておいた』食べ物がたくさんあった。嬉しくてたくさん食べた。満ち満ちになった。
家族の冷蔵庫を覗くのが好き。生活がありありと見えるから。この生活が続くように、元気でいますように。と小さく祈ってドアを閉める。またお土産持っていこう。パタン。
ばーばんちの冷蔵庫はいつ見ても、いろんな大きさの瓶に手書きで中身が書かれている物がたくさんあって楽しい。冷蔵庫になぜかクーリッシュがあった。それは冷凍室にあるもので、本当はアイスだよと教えた。ひどく甘くて驚いたらしい。変なの、と思っても詳細を見ないのね。じーじが買ってきたからわからなかったと。
冷蔵庫のドアにはいろんな張り紙。春の山菜の名前がメモされている紙の端に、「金持ちより人持ちになれ」と祖母の字。メモする癖や収集癖も、私はきちんと祖母から受け継いでいる。
母も母で、私が実家に帰るときは、今日何を話したいかをメモしている（笑）これからも時々帰らないとなぁ、と思う。駅まで送ってくれる道に、まだ片付いていない話を詰め込む。
帰宅したら、こんな何でもない話をただ聞いてくれる人がいる。食べ切らずに持って帰ってきたおいなりさんを、おいしいねって一緒に食べてくれる人。
人間に生まれて良かったのかもしれない。
次は、スイカかなぁ〜。
